体験記「初めての夜遊び」アルカデイア・アルファ(タニヤ) HN:ようしんさん
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(titole) 初めての夜遊び
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(location) アルカデイア・アルファ(タニヤ)
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(day) 2007年5月
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「プロローグ」
そんなにタイ旅行に期待していたわけではなかった。
少し、人生に疲れていたから旅に出て、自分を見つめ直したくなった。
40代の家庭を持ったサラリーマンの毎日は時間に追われるばかりで、企業の歯車と家族の長の役割をこなすばかりの日常と化していた。
そんな日常を変えたくなったから、あるときなんとなく目にした雑誌の記事に釘付けとなった。
「男の楽園」と書かれたコラム、何かが変われば、と思った。
それでも体験するまでは、タイの魅力については懐疑的だった。
そう、体験するまでは::::
「第一日目」
スワンナプーム空港に着いたのは、成田空港から出発した7時間後で、空港はオリンピック状態、さまざまな人種であふれ、混雑していた。
バンコクの中心街にあるモンティエンホテルに着いたのは夕方で、いきなり日本語のできるスタッフがいない洗礼を浴び、カルチャーショックを受けた。
本当にこれから数日間、日本語と片言の英語だけでトラブルなく過ごせるだろうか。
今から思えばそんな緊張感がこの旅の醍醐味であったような気がする。
バンコクの最初の夜、タニヤをぶらつき、クラブ「アルカディア」の門をたたいた。
20名以上のホステスの中から緑と白のコントラストがはっきりとしたドレスが似合う小柄でほっそりとした細面の女性を指名した。
Wは明るく陽気な女性で、前職はコンピューターを百貨店で販売しており、チェンマイから1年前に出てきているとのことであった。
彼女は、片言の日本語で一生懸命、話をしてくれた。
そして、彼女はペイバーしてほしいと訴えた。
どうやらタニヤは半年前のクーデター騒ぎで客足が落ちて、不景気らしかった。
そんな懸命な彼女に愛らしさを感じ、1時間後にはペイバーし、クラブを後にした。
ショート専門のツアーホテルで二人きりになり、そのほっそりとした身体から想像できないほどのふっくらとしたDカップのバストを目前にして、少年のように興奮した。
チェンマイは美人の出身地で有名だけれど、彼女もその噂に違わず、美しかった。
またそれ以上に小さなあそこのしまり具合は素晴らしかった。
あえぎ声も最初は日本語で「感じる」と演技ぎみであっが、やがてタイ語のあえぎ声に変わり、本気で感じているようだった。
キスは決してうまくなかったけれど、そのぎこちなさが逆に新鮮だった。
娼婦と接している感覚ではなく、少女と寝ているようだった。
実際は24歳の成熟した女性であったけれど、その小さく華奢な風貌がそう感じさせた。
その夜、不確かであるがゆえのほんの少しせつない気持ちが胸に宿った。
「第二日目」
昼間、遅い朝食をとることにし、彼女の勧めでタイスキ料理店に出掛けた。
彼女は勝手に自分の好きな食材をたくさん注文して、その食材をどんどん鍋の中に放り込んでいき、空になった皿を僕に手渡し、自由気ままにふるまった。
時折、手を握ったりしながらじゃれあってゆっくり食事を楽しんだ。
食事後、二人でワット・ポーとワット・プラケオに行くことにした。
ところがこの選択が誤りだった。
日中30度をはるかに超える日差しのなか夜の女性である彼女は少しずつ不機嫌になっていった。
それは今から考えると僕に対して心を許していたからかもしれないけれど、その姿はひどくわがままな日本の女性を思わせた。
寺院の散策も飽きたので、ボートで運河巡りをすることにした。
ますます日差しが強くなり、疲れのせいか彼女の表情が厳しいものに変わっていった。
水上ボートで見た景色は、その側壁に立つ国旗を掲げた豪邸郡であった。
彼女はそれらの屋敷を見て、何度も「家が欲しい。」とつぶやいた。それは日本人がいつのまにか忘れがちになっていた物への強い欲求であり、その強さは物のためなら何でもできるという強い意思の表れだった。
夕方、カフェテラスで彼女は「疲れたから帰りたい。」と言った。
そのとき悲しく感じたのは、帰ると言った彼女の言葉ではなくて、帰ると言われてどこかほっとする自分の気持ちに対してだった。
あれほど愛らしく感じた彼女はもうそこにはいなかった。
僕は彼女の労をねぎらい、次の約束をすることなく別れた。
ホテルで仮眠を取り、夜に目覚めた。
別れの後味の悪さが昨日までのテンションの高さを奪い、少し鬱な気分になった。
そんな気分を払拭しようと再びタニヤに繰り出した。
そしてクラブ「アルファ」の前で、一人の美しい女性に目が止まった。
身長173センチのすらっとした姿に白いドレスがよく似合う豪華で知的な美人が僕に微笑んだ。
その瞬間、少し気後れしながら彼女に好意を持った。
彼女の名前はB、タイが50%、中国が25%、ベトナムが25%の混血であり、以前はシンガポールの貿易会社で働いていたとのことであった。
2階のルームで、日本語と英語をミックスにして夢中で話をした。
彼女の年齢が27歳のためかその振舞いは落ち着いており、穏やかな会話が楽しめた。
彼女の話の内容は知的であり、ウイットに富んでいた。
僕は彼女と一夜を共にしたいと心底思った。
ただ、本当に一夜を共にできるか少し不安だった。
タイの高級クラブに所属するルックスがとび抜けて良いホステスの場合、ペイバーする、しないの選択権を彼女たちが持っている場合がある。
これは嫌な客と寝なくて済むばかりでなく、店に何回も通わせるという日本式のシステムを取り入れているからであろう。
彼女はまぎれもなく一級品のホステスで、彼女に選択権があるのは疑いようもなかった。
彼女が、「あなたならペイバーしてもいいわ。」と言ってくれた時、うれしくもあったが、複雑な気持ちでもあった。
彼女には高嶺の花でいてほしかったのかもしれない。
ブラックドレスの私服に着替えた彼女の美しさはスーパーモデルのように際立っていた。
その夜はすばらしかった。
水泳で鍛えた無駄のないプロポーション、胸はDカップで乳首はかわいらしく、足は長くておしりが小さいといった非の打ち所のない身体であった。
それにもましてその美しい顔立ちは混血だからなのか妙にエキゾチックで、その唇に触れるだけで溶けてしまいそうだった。
彼女とのSEXは男なら誰もが羨むと思われ、何か高級なブランド品に接しているようだった。
その夜、人生のなかで一番長い時間、激しく愛し合った。
ホテルを出た後、食事をするため彼女の行きつけのタイ料理専門店に向かった。
照明を落とした落ち着いた店に入り、彼女はトムヤムクンをはじめとするいくつかのタイ料理を僕のために選んでくれた。
どの料理も美味しかった。
彼女の知り合いのウエイターが、タイ語で彼女に話しかけ、彼女はその話を笑いながら受け止めた。
しっとりと落ち着いた時間のなかで僕は明日の約束を切り出した。
「日本に帰る前にもう一度君に逢いたい。」
残念ながら彼女は売れっ子で、明日の予定は一杯だった。
「毎日、インターネットで予約が入ってくるので明日も忙しいけれど、時間が作れれば連絡するわ。」
僕たちは再会を約束しながら店を出た。
その夜の僕は期待と不安を胸になかなか寝付けなかった。
彼女にもう一度逢いたい。
その夜、不確かであるがゆえの強くせつない気持ちが胸に芽生えた。
「第三日目」
その日の僕は朝から落ち着かなかった。
ホテルのプールサイドでもそうだったし、トレーニングルームで走っているときもそうだった。
初めてのデートの電話を待つ少年のように落ち着かなかった。
夕方、彼女から電話があった。
「9時に店に来てほしい。」
無論、承知した。
彼女との再会を果たすまで時間があったので、バッポンの街をぶらついた。
バッポンは観光客目当てに粗悪品を売りつけたり、いかがわしいゴーゴークラブに誘い込んでぼったくるちょっと怪しい街だ。
そんないかがわしさもバンコクに3日いるだけで気にならなくなるのだから人の持つ環境への適応力はすさまじい。
約束の9時にクラブ「アルファ」に入り、ママから彼女が渋滞で遅れることを告げられた。
「申し訳ないので他の女の子を付ける。」と言われたが、丁重に断り、僕はタイ酒を飲みながらカウンターでひたすら彼女を待ち続けた。
30分程送れて駆け込んできた彼女はGパン姿でラフな姿であったが、昨日にも増して美しかった。
何を着ても美しい彼女の前で僕は間違いなくこの女性に恋していると思った。
2回目の夜も昨夜と同様に素晴らしかった。
彼女は昨夜以上に燃えてくれた。
けれど僕の心は晴れず、悲しかった。
時間が余りにもなさすぎた為、味気なく感じたからだ。
彼女は次の客との約束時間を調整して、僕に1時間をくれた。
そんな彼女の気持ちはうれしかったけれど、
その時間の短さがひどく腹立たしく、寂しさを増長させた。
こんなに短い時間なら逢わないほうが良かったのではないかとすら思った。
彼女の身体は素晴らしかったけれど、僕がそれ以上に愛したのは彼女との会話だったことに気づいたのはそんな心の揺れからだった。
「再びあなたに逢える日を楽しみにしている。」と彼女に告げ、僕らは別れた。
「帰りの飛行機のなかで」
素晴らしい旅だった。
僕はバンコクで、こんなに心が揺れるなんて、思いもしなかった。
こんなにせつない想いをしたことも久しぶりだった。
彼女達は僕の中に眠っていた感情の扉を開け、その中身を引き出してくれた。
その心の揺れやせつなさが、僕にはすこぶる懐かしい感情だった。
日本に帰ったらまたいつもの日常がやってくるけれど、僕は決してこの旅のことは忘れないだろう。
いつかきっと再びこの地を訪れたい。
恋しタイから再び訪れよう。
機内が気流の影響で、ひどく揺れた。
どうやらエアポケットに入ったらしい。
眠気を感じて、僕は心地よい眠りについた。
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